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[不動産トレンドNEWS]
【対談レポート】田原総一朗氏×長嶋修が日本経済とマンション・住宅市場を語る(前編)

日本経済、日本のマンション、住宅市場はこれからどうなっていくのか、どうあるべきか。日本を代表するジャーナリストの田原総一朗さんがさくら事務所創業者で、新刊『100年マンション 資産になる住まいの育てかた』の著者、長嶋修に切り込んでもらうべく、対談のイベントを行いました。

なぜマンションの修繕金が不足するのか

(田原) 僕、マンションのこと、まったく知らないから、長嶋さんにいろいろ聞きたい。

(長嶋) このたび『100年マンション 資産になる住まいの育てかた』という本を刊行しました。本書では、これからマンションに大変なことが起きると述べています。

 私の主張は「マンションは3極化していく」です。田原さんが住んでいるような高級マンションはこれからも価値を維持できますが、それは全体の15%にすぎません。それ以外の70%のマンションの価値は、だらだらと下落していくしかありません。一部の地方にあるものとか、大都市郊外でもバスを利用しなければならない物件は、本当に価値がゼロになり、売ることも貸すこともできなくなります。いずれはただの廃墟になる、こうした問題意識を持っています。

 日本は戦後の高度成長の中で、マンションを640万戸造ってきました。問題は築年数です。現在築30年を超えているマンションは190万戸ぐらい。10年経つと350万戸、倍ぐらいになります。20年経つと、さらに倍になります。

 古くなったら建て替えればいいのでは、という考えもあります。しかし、これまで建て替えが行われたマンションは644万戸のうち、270棟だけです。築30年以上のマンションのうち、0.01%にすぎません。

 事例をあげます。東京・JR板橋駅から徒歩2分ぐらい、20平米のワンルームマンションがあります。価格は970万円。投資用マンションです。ぱっと見はいいのですが、1つ大きな問題があります。

 修繕積立金が月1,500円となっています。修繕積立金とは、建物をずっと修繕していくために毎月所有者たちが積み立てていくお金です。20平米のマンションの場合、毎月約4,000円ずつ貯めていかないと、2回目、3回目の修繕に対応できなくなります。

 ですから建物を直そうとすると、みんなで借金するか、100万円、200万円の一時金をいっぺんに出すかしか方法はありません。それができないなら、建物は老朽化するばかりです。大手が造ったマンションでも、修繕をしなければ長持ちしません。マンションにはこうした根本的な課題があるという話です。

(田原)どうして修繕積立金を1,500円しか取らないの? こうなることが分かっていながら、どうして取らないのか?

(長嶋) マンションを買うとき、大半の人は住宅ローンを組みます。毎月ローンの支払い以外に管理費と修繕積立金も支払わなければならないのですが、マンションを売る側は、その部分を見かけ上限りなく小さくしておきたいと考えます。

(田原) 高くしたら売れないから。

(長嶋) そうです。高くすると売れなくなります。

(田原) 買い手はどうすればいいのか。

(長嶋) 問題意識をきちんと持つしかありません。修繕積立金を低くするのはデベロッパー側の論理です。あるいはお客に対する優しさなのかもしれませんが。

(田原) 買い手は、1,500円という金額が安いのか高いかわからないじゃない。

(長嶋) 平米当たり毎月200円ぐらい貯めていれば大丈夫です。例えば100平米のマンションだったら、1年目から毎月2万円貯めていれば、その後、借金をしなければならなくなるようなことはありません。それが今は、5,000円とか1万円ぐらいしか貯めていないので、みんな苦労しているんです。

(田原) 最初から1,500円にしないで、3,000円か4,000円ぐらい貯めておけばよかった。今までどうして、建築業者はこんな「だまし」をやってきたんですか?

(長嶋) 国も国土交通省も、こういう現状を把握してなかったからです。

日本経済にとっても大きな問題

(長嶋) そんなこんなで、不動産業界には問題が多いわけですが、とりわけこのマンションの問題というのは、日本経済にとっても大きな影響があります。都心部のマンションはまだいいですけど、ちょっと駅から遠いとか、郊外のバス便みたいな物件はどんどん価値が落ちてしまいます。それでも「ずっと住んでいればいいよ」と言うかもしれませんが、将来売ることも貸すこともできなくなっていくと、マンション1棟全部がスラム化します。

(田原) どうして旧住宅公団は、東京から遠いところにばかり住宅を造ってきたのですか?

(長嶋) かつてはしょうがなかったんじゃないですか。公団で団地などが造られるようになったのは1970年代からでしたけど、あのころは深刻な住宅不足でした。住宅建設法という、住宅をたくさん造ろうという法律を作って、5年ごとに何戸造るという計画を進めてきました。多摩ニュータウンなんかはもうみんな喜んで、抽選何十倍以上という感じで購入していきました。

(田原) 今、多摩ニュータウンは若い世代がどんどん出ていって、老人ばかり住んでいる。

(長嶋) それもこれも人口減少と少子高齢化のせいですね。多摩ニュータウンも全部が全部だめなわけではありません。駅前や駅近は建て替えができたりして、新しい人も入ってきています。しかし、ちょっとバスで行くようなところはもう……。

(田原) 何度も取材しました。

(長嶋) 50戸中、5戸とか10戸しか入ってない建物がたくさんあります。

(田原) 空き家ばかり。

(長嶋) はい。これが今後、全国に広がりそうなんです。

(田原) じゃあ、どうする?

(長嶋) その解決策をこの本に書いてあります。まず大事なのは、住宅の総量をコントロールすること。バブルが崩壊してから、景気対策として新築住宅をたくさん買ってもらおうという政策を、20年ぐらいやってきました。その結果、空き家が増え過ぎてしまいました。

悪いのは誰か

(田原) よくわからない。1991年にバブルが崩壊した。バブルは必ず起き、崩壊するもの。バブルが崩壊したら、必ず地価はどんと下がる。みな分かっているはずでしょう。何で造り続けてきたんですか。下がるに決まっているじゃない。

(長嶋) 無計画なんです。誰も全体を管理、コントロールしていません。

(田原) 誰もそれを直さなかった。

(長嶋) マンションに限らず、日本の住宅政策は結構いいかげんです。

(田原) どうして?

(長嶋) 昔は誰もが住宅を求めていたので、住宅をつくり続けてきました。しかし、今もその延長でやっているんですね。いつの間にか住宅政策が景気対策にすり替わってしまいました。

(田原) 僕は最初、アパートに住みました。そのあと10回替わっています。10回、住宅あっせん業者に頼んで、10回替わりました。住宅あっせんというのはまったく信用できません。もっとひどいのは、不動産屋さん自身が自分の仕事を高級だと思ってないこと。

(長嶋) 思っていませんね。2000年代に入って不動産が金融商品化したこともあって、優秀な人も増えてきましたが…。最近は中古住宅とか、リフォームをするとか、リノベーションとか、そういうものも面白いよね、と考える人たちが増えてきたこともあって、やや正常化しています。


日本の住宅施策から都市のあり方へと、田原総一朗氏×長嶋修の対談はまだまだ続きます。

後編は12/30に更新予定です。お楽しみに!

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